木造大架構で大きな空間に包まれる住まい
木造軸組工法(在来工法)で、木造架構の大空間を造った事例。
建物の四隅に8寸(約24cm)角、長さ7Mの紀州杉の大柱を四隅に立て、これらを中心にして約11×5M、2層吹抜の大空間を造りました。
お客様は地元で代々続く家柄の本家で、盆や正月など折々に親戚が集まるので「たくさんの人が集まれる空間を」との要望に応えました。
中央の大きなリビングが暮らしの中心となります。奥の和室は普段はリビングと一体で利用しますが、来客の際は戸を閉めて客間となる可変空間です。
また吹抜けた大きなリビングは住まい全体の繋がりを生みます。例えば写真に見られる大きなアールの開口は、はじめは筋交を隠す表現として設けたものでしたが、結果として「どこにいても大きな空間の中のどこかにいる」という事を認識できる効果を得ました。
母屋に隣接して約12×7.3Mの大型ガレージを設けました。所有する車4台+バイク+大型外収納+ストーブ用の薪まで置ける大空間ですが、同程度のガレージ製品よりも安く上がるという事で採用して頂きました。木造軸組工法は工夫次第で技術的にもコスト的にも無限の可能性があります。
ところで「なぜこのような大架構を造ったか」について、もう一つの大変重要な理由がありました。
お客様の生家は今回の敷地のすぐ近くにありました。新築して引越した後にこの生家は解体されたのですが、新築中に新居の窓からこの生家が見えたので写真を撮っておきました。この写真からわかる様に、この生家は樹齢100年超の立派なケヤキやクスノキ、サクラ、ウメなどが生い茂った、大変歴史ある土地でした。
しかし今回「区画整理」という、人口増加に伴う道路やインフラ、公共施設や住宅地などを整理する事業にかかったためにこの生家を更地にせざるを得ませんでした。
新しく整理されていくまちの中に、この歴史ある自然環境の記憶を残したいと考えました。新居に配した大きな柱は巨木を象徴し、そこから伸びる枝葉に抱かれて生活する様なイメージ。窓からは木漏れ日の様に明るい陽が差し込み、お客様にもイメージが共有され、大変満足して頂きました。
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専用住宅
W造
2階建、一部平屋ガレージ
■外装
屋根:彩色スレート葺
壁:窯業系サイディング
サッシ:アルミ樹脂複合サッシ
■内装
天井・壁:クロス貼仕上
床:パイン無垢t30mmフローリング
■設備
給湯:エコキュート
暖房:薪ストーブ F500/JOTUL
冷房:ルームエアコン
換気:第3種換気